新型コロナの感染が拡大し、私たちの働き方も変わってきました。将来への不安が増していく中で、より「安定」を求める傾向が強いようです。
求人サイトを運営するエン・ジャパン株式会社が サイトユーザーを対象にした調査結果(2021年11月に発表・回答数3,334人)によると、「官公庁・自治体への転職」に興味がある人は回答者数の9割だったとのこと。
40代の私の率直な印象としては、「おいおい、今更公務員になれんのかよ」という感じですが、実際には外部人材を積極的に採用する自治体が増えているようです。
目次
関心が集まる官公庁・地方自治体への転職
90%が官公庁への転職に興味あり
エン・ジャパンの調査では全体の89%が「官公庁・自治体への転職」に興味があると回答。
年代別にみると、
20代が74%
30代が85%
40代が92%
50代が92%
となっています。
年齢が上がるにつれ、関心が高くなっていることがわかります。やはり、「安定志向」は年とともに高くなるのでしょうか。社会に出て間もない人が多い20代が低いことからもそれが感じられます。
もう一つ、気になる数字として。この回答結果、回答者の年収別でも集計されているのですが、ほぼ全ての年収規模で90%という高い数値が出ています。
現在年収1000万円以上の人でも多くの人が官公庁や自治体への転職に興味を持っているんですね。
キーワードは「安定」と「やりがい」
「官公庁・自治体への転職」に興味がある理由でダントツに高い結果が出たのは、「安定した収入を得たいから」と「仕事を通じて社会貢献をしたいから」の2つでした。
「安定した収入」は若い世代に、「社会貢献」は40、50代で高い割合になっています。
自治体の外部登用 どんなポジションで
では、官公庁などに転職して、どんな仕事がしたいのか。
順位をみると、
1位 地方創生
2位 観光企画・マーケティング
3位 教育
4位 デジタル
5位 災害対策
という結果に。
民間企業で培った経験やスキルが活かせそうな分野の人気が高いですね。
官公庁・自治体で働く場合、どういった領域・分野の仕事に興味がありますか?(複数回答可/年代別)
エン・ジャパン株式会社「3,000人に聞く「官公庁・自治体への転職」意識調査」
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2021/27647.htmlより
採用する側の官公庁などでも、外部からの人材登用に積極的なってきており、特にプロモーション、ブランディング関連やIT、DX関連での人材を求めている傾向が強いとのこと。少子高齢化による人材不足の解決や、新型コロナの影響で業務のデジタル化推進が、当初の想定以上に求められているんですね。
特にデジタル化においては、総務省が策定した計画の中で、「自治体DXを推進する体制づくりのためには、デジタル化の専門知識を保有した外部人材の登用が重要」であるとしています。
そうなってくると、どんな人材を採用して、どんなプロジェクトを進めるか。「住みたい、働きたい」と思ってもらえるように、自治体間の競争が始まっているといってもいいでしょう。
「自治体人気」って以前はあまり気にすることはなかったですが、「住みたい自治体ランキング」が作られるようになったり、「ふるさと納税」人気により、「あのまちっていいよね」と感じることが増えているのではないでしょうか。
【具体例】変わる自治体の姿勢 福山市の取り組み
自治体初のデータベースを構築
独自の取り組みを始めた自治体の一つが広島県福山市です。
2021年春、福山市が自治体初となる「副業・民間人材登用データベース」を構築するために、人財活用プラットフォームを提供し、その有効性を実証する、とビズリーチが発表しました。
福山市は全国に先駆けて、2017年に地方自治体で初めて民間人材を副業・兼業で公募。積極的に外部人材を採用してきましたが、「人材が欲しい!」となった時に、採用までのスピードが課題となっていました。
1 どこにどんな人材がいるのか、データ化されていない
2 プロジェクトごとに採用の準備をするため費用や時間がかかる
といったことがネックになっていたようです。
そこで、ビズリーチのプラットフォームを使って、随時、市の事業に関わった企業や人材を(本人の了承を得て)登録していき、「人材のデータベース」を構築。人材が欲しいプロジェクトができた場合は、データベースから人材をピックアップし声がかけられる、といったイメージでしょうか。
プロジェクトの分野、副業や兼職といった契約形態など条件面を絞り込んで人材がリストアップできればかなりの効率化になりそうですね。
https://hrmos.co/news/2021072902.htmlより引用
【具体例】実際の副業求人
副業で募集されている奈良県の求人
さて、官公庁関連で働きたいという人が多い、外部の人材を積極的に使いたい自治体が増えている、という話をしてきましたが、実際に求人はあるのでしょうか。
「自治体 副業 募集」などで検索すると、意外と仕事はあるようです。
自治体の直接的な契約ではなく、自治体の仕事を請け負っている企業の求人もたくさん出ますが、自治体直の仕事も出てきます。
例えば、
奈良県では、東京新橋にブランドショップ「奈良まほろば館」をリニューアルオープン(令和3年8月)させました。当館の認知度向上、来館促進、県産品の魅力発信に向けてSNS広報を強化するため、SNS運用マニュアルの作成、運用改善の提案、その一部運用とこれらに関する現場スタッフの教育を行っていただきます。
といった仕事が見つかりました。(2022年1月29日時点)
週1回程度、都内の店舗へ訪問し、現状把握や施策を提案。給料は月6万円とのこと。短期契約のようですが、プロモーション関連の職務経験があり、副業を探している人にはなかなか良いのではないでしょうか。
まとめ
新卒で企業に就職したものの、公務員になるのが諦められない。または、公務員の魅力に気づいた、という20代であれば、勉強して公務員試験を受けるのもありでしょう。
しかし、多くの公務員採用試験は30歳位がリミット。40を超えた世代ではこれまでのキャリアや熱意をフルに生かし、自治体が求めている分野に入り込んで活躍する道も選択肢の一つです。
実際に私の知っている市役所職員は「既存の公務員だけで仕事進めると、まさにお役所仕事。慣例を気にして、社会に対応する変革は難しい。”新しい風”が内部に欲しい」と期待しているようです。